治療のアプローチ
ニコチンによる依存は、主に「身体的依存」として現れます。身体的依存にはニコチンパッチ(貼り薬)やバレニクリン(飲み薬)といった禁煙補助薬が効果的です。これらの薬を使用するとニコチン切れによる禁断症状(離脱症状)が軽減されるため、禁煙成功につながるでしょう。
ニコチン依存症には身体的依存の他に「習慣依存」や「心理的依存」があります。習慣依存には認知行動療法を通じたカウンセリングが有効です。ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの研究によると、習慣化には平均66日かかるそうです。禁煙はタバコを吸う習慣を、吸わない習慣に変えることなので、禁煙外来での12週間は薬による治療だけでなく、新たな習慣を身につけるための訓練期間と捉えるといよいでしょう。
心理的依存は主にタバコに対する誤った認識(認知のゆがみ)から生じます。医師とのカウンセリングを通じてタバコに対する見方を変えることで、依存から脱却することができます。
治療の流れ
禁煙外来では保険診療を利用して12週間に渡って治療を行います。この期間中、患者は5回の診察を受け、さまざまな検査やアドバイスを受けます。
初回の診察ではニコチン依存症かどうかをまず確認します。依存症と診断された場合、保険診療による禁煙治療が可能になるからです。呼気中の一酸化炭素濃度を測定して禁煙の開始日を決定します。患者の喫煙歴や禁煙歴を基に、ニコチン切れによる症状への対処法をアドバイスしたり、禁煙補助薬を処方したりします。
2回目以降の診察
初回から2週間後に行われる2回目の診察では、再度一酸化炭素濃度を測定し、禁煙の進捗状況を確認します。患者が感じている不安や気になる症状についても相談に応じ、適切にアドバイスを行います。
初回から4週間後に行われる3回目の診察の時期は禁煙の効果が見えてくる頃です。「咳や痰が減る」「息切れがしにくくなる」「目覚めが爽快になる」などの効果が実感できるようになります。3回目の診察でも一酸化炭素濃度を測定し、禁煙の効果を確認したり、必要なアドバイスをしたりします。
初回から8週間後の4回目の診察では、一酸化炭素濃度の測定や、禁煙が続いているかどうかを確認します。この時期は禁煙に慣れてくる頃なので、改めて禁煙の理由を思い出してもらったり、禁煙して得られたメリットを考えたりなど、禁煙を維持するために必要なサポートを行います。
最終診察
初回から12週間後の5回目の診察で禁煙治療は終了です。最終診察でも一酸化炭素濃度を測定し、禁煙を維持するためのアドバイスをします。また、患者が今後禁煙を続ける上での不安や問題についても相談に応じます。