冷静に指導することが大事
喫煙が健康に与える影響を理解し、禁煙を支援することは治療効率の向上につながる重要な要素です。とはいえ、決して禁煙を強制してはいけません。患者が自分の意志で禁煙に取り組むために、冷静かつ効果的に指導することが大切です。
また、患者自身が禁煙を決意しても周囲の影響で喫煙を続けてしまったり、禁煙後に別の依存症(アルコールやギャンブルなど)に陥ったりするリスクもあります。禁煙治療は単にタバコを辞めることを目的とするのではなく、患者個人の生活全体を見守り、社会全体に目を向けてサポートしていきましょう。
喫煙と健康への影響を伝える
喫煙が健康に与える影響を認識している患者がほとんどですが、その詳細や禁煙による具体的なメリットについて理解していない人も少なくありません。たとえば、高血圧は喫煙が原因の1つとなり得ますが、単に「喫煙が原因となることがある」と伝えるだけでは不十分です。「禁煙することで高血圧の治療薬を減らせるかもしれない」のように具体的な改善点を示すことで、禁煙のメリットを理解しやすくなり、患者も前向きに行動するようになります。
「5Aアプローチ」による禁煙支援
一般の外来診療や健康診断などでも実施可能な禁煙支援として、「5Aアプローチ(Ask、Advise、Assess、Assist、Arrange)」があります。このアプローチはアメリカで開発され、世界中で有効な方法として活用されています。
具体的な内容は、「喫煙者に喫煙本数や頻度を尋ね、状況を把握する(Ask)」「喫煙者に禁煙の効果を説明する(Advise)」「喫煙者の禁煙への関心度をアセスメントする(Assess)」「関心度に合わせて禁煙を指導・支援する(Assist)」「フォローアップを計画し、次回の診療や支援の準備をする(Arrange)」です。
この5Aアプローチに基づき、2008年には複数の関連学会が「禁煙治療のための標準手順書」を作成しました。この手順書は治療スケジュールや来院タイミング、問診内容などを中心に構成されていますが、コミュニケーションスキルや各職種の役割については明確に示されていません。そのため、実際に活用するためにはもう少し情報が必要です。
重要なのはコミュニケーションスキル
禁煙外来では看護の基本である「対象の理解」が強く求められます。これは禁煙に限らず、「食育」や「保健教育」など、健康に関わるあらゆる活動において重要なスキルです。
禁煙外来では患者の社会的環境を考慮し、その生活スタイルに合った治療方針を決定していくため、信頼関係を築き、適切な質問を繰り返しながら患者の気持ちを引き出すことが重要です。